これから頑張りますのでよろしくお願いします。
高校のボクシング部に所属している。
鍛えてるだけあって胸板は分厚く、腹筋は6つに割れて盛り上がっている。
この肉体美は俺の自慢でクラスの男子からも評価は高い。
ある日うちのクラスに転校生がやってきた。
名前はカイト。
眼鏡がよく似合う爽やかなイケメンで痩せていて背も高く、いかにも女子にモテそうな奴だった。
本人いわく「前の高校ではボクシングをやっていた」そうなのでボクシング部に入りたいらしい。
「あんなひょろい奴、うちの部に入っても雑用係になるだけだ……。」
俺はそう思っていた。
その日の1限は体育。
着替えていると周りの奴らが
「マサト、また筋肉ついたな。」、「本当に俺達と同い年かよ。」、「腹筋やべぇな。」と口々に褒める。
俺もまんざらでもないので、「そうだろ?」と力こぶを盛り上げてアピールした。
その時女子の何人かが「キャー!!!」と黄色い声をあげた。
声の方を見るとカイトが上半身裸になっていた。
その体を見て俺は驚愕した。
Cカップはあるだろう分厚い胸板、鳩尾から臍の下まで綺麗に6つに割れて盛り上がった腹筋、丸太のように太い腕……俺以上の肉体美だった。
どうやら奴は着痩せするタイプらしい。
俺のことを褒めていた連中も皆カイトの方に流れていった。
その後の体育の授業、そしてクラスでの授業でもカイトは活躍し、半日でクラスの人気者となった。
何でも出来るのに自慢しないところがいいらしい。
当然俺はおもしろくないが、得意な体育が互角であれだけ勉強も出来るとなると俺が勝てるのは……ボクシングだ!
俺は地区大会高二の部で優勝したこともあり、かなり自信があった。
そこで俺はボクシングについて話したいとカイトを昼休みの屋上に呼び出した。
アイツこの後の地獄も知らないで、「マサト君だよね?僕も君とは話してみたかったんだ。必ず行くよ。」なんて爽やかに言いやがった。
昼休みが楽しみだぜ…。
少し遅れてカイトは来た。
「ごめん、遅くなっちゃって。マサト君ボクシング部だよね?僕すぐにでも入部したいんだけど…。」
「悪いがうちのボクシング部には入部テストがあってな。それに合格しないと入部できないんだ。さっきお前の体見たけどそれだけじゃ強さはわからねぇからな。」
「いいよ。入部テストって何するの?」
「お前は経験者だからな。俺と試合してもらおうか。」
真っ赤な嘘だった。本当の入部テストは腕立てとか腹筋とか基本的なことだけだが、こいつだったら難無くパスするだろう。
これ以上俺の居場所を取られてたまるか。
「いいけど今から?」
「ああ。」
「ここにはリングがないし、第一今からフルラウンドやったら授業に間に合わないよ。」
「わかってる。だけどお前はすぐにでも入部したい。そこで試合の代わりに腹パンでどうだ?」
俺は腹パンが超得意だった。ボクシング部高二で俺の腹筋を突き破れる奴はいない。
こいつも同じようにボロ雑巾にしてやる。
「別にいいけど…。」
そう言って俺達はシャツを脱いで上半身裸になった。
「悪いが試験官から先に行かせてもらうぜ。」
「どうぞ。」
そう言ってカイトは腹筋に力を入れた。
普段あれだけ盛り上がっていた腹筋が、力を入れるとさらに大きく膨らんだ。
俺はその腹筋に驚きつつも全力で奴の腹筋にボディーブローを決めた。
手加減なんかしない、一発で格の違いを教えてやる。
バシッ!
何て硬ぇ腹筋なんだ!
綺麗に決まったが、奴はびくともしない。
そんな…馬鹿な……。
「凄いパンチ力だね。僕の腹筋が赤くなってるよ。」
奴は笑いながらそう言った。
こいつ……化物か…?
「次は僕の番だね。」
俺は腹筋に力を入れる。
腹筋が硬いだけじゃ強いボクサーとは言えない。
そのパンチ堪えてやるぜ!
「いくよ?」
「こい!」
ドボォッ!!
「グハッ、オェェェェェ」
凄まじい威力のパンチだった。
何だこのパンチは…。
俺は堪らず、のたうちまわりながら早弁した昼飯を戻してしまった。
「僕実は関西の地方チャンピオンなんだよね。向こうに僕より強い高校生いなくなっちゃって。だから君みたいな地区大会レベルのパンチなんて痛くも痒くもないんだ。これで入部できるね。」
奴はそう言い残して服を着ると颯爽と屋上を出て行った。
俺は午後の授業をサボり、一人屋上の隅で悔し涙を流した。